2007-06-24

ツ、イ、ラ、ク



「ツ、イ、ラ、ク」姫野カオルコ(著)

恋愛小説には、自分からはほぼ手を出さないのですが、つい手にとってしまった理由は、角川文庫のオビに「読書のプロがこぞって絶賛。」とあり、橋本治氏の「人が人にやさしくなるためには、原稿用紙で600枚くらいの疾走が必要なのかもしれない。」という推薦の言葉がありました。

結果、読んでよかった。

主人公と思われる隼子(じゅんこ)小学2年生、関西の架空のいなか町、よくあるませた小学生の女の子たちのグループの問題から話しは始まります。


そのグループ内の2番手?の存在の統子というませた娘が、頼子のぬけがけを理由に、仲良しグループ全員をよび、彼女の足を踏み、背中に砂を入れるようにと指示します。理由は、トップ?の京美ちゃんの想う人の「太田くん」と頼子が“ニンジャマン消しゴム”と“自分の香水入り消しゴム”を交換したからだと言うのです。うわー。子供時代のなんたる滑稽さか。ちなみに、この場所に京美ちゃんはいません。なぜ統子が太田君に関してここまでこだわったかは、後で分かることですが、とにかく、こういった大人になったらくだらないと思いながらも、実際の社会生活にでるとほぼ同レベルのいじめらしきことがあるのか、そして、そんな中にもそこに交わりたくない、絶対的に否定派がいるということがこの本にしっかり記されているではないですか!

隼子は、こういった茶番が大嫌いであり、それを口にして、徒党を組むことを拒否します。さらに、彼女は小学生でありながら、みんなと遊ぶよりひとりでいることを好み、空想の世界こそ、自分の居場所だと感じています。でも、誰もわかってくれないような創造の世界を一度は仲間に打ち明けますが、理解されずにちょっとした辛さもなめます。そこから、ますます多感な時期、中学生になり、数々の大人の世界を知った末、まわりの友達も大人になり、様々な経験をしているのですが、それをお互いに知る由もなく、話しは佳境に入ります。

痛々しく、せつなく、登場人物ひとりひとりに、なんともいえぬ共感も得つつ、最後はこまっしゃくれてみえた、隼子に「よかったね」と肩に手を置きたくなるようなエンディングでした。幼かったころの自分の気持ちや友人達のことを久しぶりに思い出すことができた大人の読み物だと思いました。

また、この人の別の作品を読んでみようと思います。
読書の秋とよく言いますが、梅雨時もなんじゃないかな。

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